チベット横断③ チョモランマ・ベースキャンプ(海抜5,200m)
チベットのラサから西に500kmにあるティンリから、エベレスト山(チベット名:チョモランマ)を望むことができるベースキャンプへ行くため、チャーターしたランクルで出発した。
ティンリからベースキャンプまでの約75kmは、ずっと未舗装の荒れた道が続く。チベットの森林限界とされる4,500mを超えると、木々は姿を消し、荒涼とした風景が広がった。目の前に雲がながれていた。
車の窓の外の湿原にチベットスナギツネが歩いていた。この辺りは中国国家級自然保護区に指定されていて、手付かずの自然が残されている。
標高が上がるとゴツゴツとした石が目立つようになり、氷河を携えた6,000m、7,000m級のヒマラヤの谷間を進んでいく。
ティンリを出発してから4時間後、ようやく海抜5,150mにあるロンボク寺(ロンブク・ゴンパ)に到着した。世界で最も高い場所にある寺院として知られるロンボク寺は、チョモランマを望む谷間に建てられている。
ここから先は原則、車の通行が禁止されているため、ベースキャンプまでの5kmは徒歩で向かう。軽い食事を済ませ、カメラだけを持って出発した。
ロンボク寺の先には、食事や宿泊ができるテントが並ぶ。
ロンボク寺からチョモランマ・ベースキャンプまでは馬車で行くこともできる。客引きに何度か声をかけられた。
標高が5,000mを超えているので、酸素濃度は地上の50%しかない。冷え切った空気の中、しばらく歩くと息切れがひどくなり、ロンボク寺に着いてから始まった頭痛も悪化したので、先ほどの馬車を断ったことを後悔した。
休憩中に目の前にマーモットらしき動物を発見。ほとんど草も生えていないような場所で何を食べているんだろう。
さらに進むと、土砂で堰き止められた雪解け水の池があった。とても寒かったが凍ってはいない。
途中、ベースキャンプから馬車で降りてきた軍人とすれ違う。
ロンボク寺から歩くこと約2時間、ついにチョモランマベースキャンプに到着。「Mt. Qomolangma Base Camp」と書かれた石碑には海抜5,200mと刻まれていた。
ベースキャンプを中国人民解放軍が見張る。
ベースキャンプの高台の向こうにチョモランマが見えるはずだったが、雲に覆われていた。
ラサでランクルをチャーターする際、「8月にベースキャンプまで行っても山が見える確立は20%」と言われていたので覚悟はしていたが、寒さと強風に耐えながら1時間半待っても、その姿を見ることはできなかった。
世界最高峰もチベットの空の下では雲の中。チョモランマの姿を求めて空の大きさを知った。
ベースキャンプにいたキバシガラス。ラサ周辺でも良く見かけたこのカラスは、登山家の食料を追って8,000m以上でも目撃されるらしい。
ベースキャンプのタルチョの周りを飛んでいたヒバリ。
ベースキャンプの岩陰の青い花。海抜5,200mに花が咲いていた。
ロンボク寺の周辺はそこらじゅうにヤクがうろついていた。
ロンボク寺前の食堂は一品10元(約150円)程度。頭痛が続いていたのでビールを飲む気にはなれなかった。
トイレはボットン式。
ロンボク寺前の宿はドミトリーの1ベッドが40元(約600円)だった。照明は太陽光で蓄えられた電気で夜の間少し灯っただけ。水もないのでペットボトルの水でコンタクトレンズを洗った。
チベットのヒマラヤのど真ん中、夜になると辺りは静寂に包まれる。高山病の症状は就寝時にひどくなることがあると聞いていたが、その心配をよそにぐっすり眠ることができた。後にも先にも5,000m以上の場所で寝ることはないだろう。
明日は、来た道を引き返し、ティンリまで戻ってから、ネパールとの国境の町ダムを目指す。