カマキリ農法。無農薬、有機栽培の担い手。

キュウリの苗の上のオオカマキリの幼虫
オクラの幼苗でじっとして動かないオオカマキリの幼虫
オクラの幼苗で静止して動かないオオカマキリの幼虫
息子の指に乗るオオカマキリの幼虫

春先の家庭菜園では、昨秋からの長期栽培が続くソラマメやイチゴがアブラムシの被害に遭う。冬の間に集めておいたカマキリの卵を枝ごとそれらの畝に何本か挿しておくと、孵化したばかりの小さなカマキリがアブラムシを捕食してくれる。イチゴを防虫ネットのトンネルで囲んでおくと、カマキリの幼虫はその中で成長するので、効果は抜群だ。カマキリを害虫対策に用いることを俗にカマキリ農法と呼ぶ。

イチゴの葉にのるオオカマキリの幼虫
イチゴの葉にのるオオカマキリの幼虫

4月20日前後は二十四節気の「穀雨」。南からの暖かい春の雨が土を潤すので、古くから農作業の目安とされてきた。この時期、羽化したばかりの初令幼虫は、体長1cm弱で水滴に溺れてしまうほど弱々しいので、大雨と春の嵐の翌朝に葉っぱの上で元気にしている姿を見ると、よく耐えたと褒めてやりたくなる。1つの卵から100匹以上の幼虫が孵化しても、クモやトカゲに食われたり、鳥に狙われたりして夏まで生き残るのはわずかだ。

アブラムシを捕食する大カマキリの幼虫
枝豆の葉の上でアブラムシを捕食するオオカマキリの幼虫

カマキリ農法は、本来の畑なら自ずとそうなっているはずの自然環境の一部をヒトの手で再現するやり方だ。大きく成長すると、野菜の花の受粉を助けるチョウやハチまで捕食してしまうので、増えすぎるのも良くないが、実際は成虫になるまでにはほとんどいなくなってしまう。

ミニトマトの葉の上のハラビロカマキリの幼虫
ミニトマトの葉の上のハラビロカマキリの幼虫

ヒトは2万3000年前から農耕を始めたとされている。100年ほど前に化学肥料が誕生するまでは、100%有機の食材で人類は続いてきたが、今、日本で有機野菜が占める割合は0.4%以下だ。虫食いがなく、形や大きさの揃った、規格内の野菜を大量生産するには、化学肥料や農薬を使わざるを得ない。

一箇所で複数の種類を栽培する家庭菜園は、集まる害虫も野菜の病気やトラブルも様々になるので、ある程度は自然の循環が必要だ。家庭菜園の害虫対策がカマキリだけで解決できるわけではないが、卵から出てきたカマキリの幼虫たちがアブラムシを捕らえていたり、生き残った2齢、3齢幼虫がバッタを捕らえている姿を見ると、小さな鎌を借りるメリットはある。