ヒマラヤの国境コダリからネパールの首都カトマンズへ

チベットとネパールの国境コダリのイミグレーションに到着すると、僕らは60日間有効のツーリストビザを30ドルで取得した。先ほどのチベット側の国境は殺伐としていたが、ネパール側の国境は係官も陽気でウェルカムな雰囲気。バックパックを背負った背中が久しぶりに汗ばんでいるのを感じながら、旅の7ヶ国目「ネパール王国」に入国した。腕時計の時刻を2時間15分戻し、長いこと共にしてきた中国の北京時間ともここでお別れだ。
一歩、国境を越えた途端、そこに広がる光景は、昨日までいた中国のチベット自治区とまるで異なっていた。湿った空気が肌にまとわりつく蒸し暑さのなか、ルンギと呼ばれる伝統的な腰巻を身にまとった褐色の女性たちが、大きな荷物を背負って行き交う。滝の下では子供達がびしょ濡れになって遊んでいた。


コダリから首都カトマンズまでの道のりは、山岳地帯を抜けるアルニコ・ハイウェイ(Araniko Highway)を通り、車で4~5時間ほど。天井にも人が乗るローカルバスを使ったほうが安いが、ランクルをチャーターしたメンバーと共にジープタクシーを選んだ。声をかけたドライバーのカトマンズまでの運賃の言い値は一人800ネパールルピーだったが、値段交渉をして600ルピーまで下げてもらうことができた。相場は知らないが、少なくとも山道をローカルバスの天井にしがみつくよりはマシだ。両替したばかりのネパールルピーで運賃を支払い、ジープに乗り込んだ。



出発して30分ほど、ジープにぎゅうぎゅう詰めにされながら、僕たちは山道を進んでいた。しかし、突然運転手が車を停め、エンジンを切った。前方で土砂崩れがあり、通行止めになっていたのだ。

写真を撮るのがいい暇つぶしになったが、2時間経っても動き出す気配はなかった。後から来たバスやトラックも続々と並び、車1台すれ違うのがやっとの崖沿いの道に50台以上の車列ができた。
時間を持て余していたので写真を撮って過ごしたが、2時間経っても車が動き出す気配はない。後続のバスやトラックも次々と到着し、崖沿いの細い道には50台以上の車が連なっていた。



崖崩れの付近では、小型のブルドーザーが作業をしていた。雨季のネパールの山岳地帯では、崖崩れは日常茶飯事らしい。結局、車が通れるようになったのは3時間後だった。

途中、掘っ建て小屋の店で、ネパール料理のダルバートを初めて口にした。チキンが付いて120ルピー(約220円)の食事だった。

昼食後、再びジープは渓谷沿いの道を進む。定員オーバーのジープは窮屈だったが、全開の窓から吹き込む風が気持ちよかった。国境からカトマンズへ続くアルニコ・ハイウェイは、次第に舗装された道路になった。


ジープの運転手は、カトマンズ市内に入る前におすすめの展望スポットに連れていってくれた。彼は長時間の運転で疲れているはずなのに、わざわざ僕らのためにしてくれて嬉しかった。ネパールに来る前からネパール人は親切だと聞いていたが、国境で値段交渉をしたこのドライバーもその一人だった。

目的地であるカトマンズのツーリストエリア「タメル地区」に到着。四川省の成都で知り合ったバックパッカーのサトル君が教えてくれた「Cherry Guesthouse」にチェックインした。トイレとシャワー付きのツインルームが二人で300ルピー(約540円)。チベットのラサから4泊5日の移動を終え、この日の夜は本当にぐっすり眠ることができた。