カトマンズ観光(ネパール最古の寺院スワヤンブナート、王宮広場ダルバール・スクエア)
ネパールに来てからしばらく雨が続いていて、すっかり旅のリズムが崩れてしまっていたが、天気が回復したので、重たくなった腰を上げて観光に出掛けることにした。カトマンズのタメル地区から歩いて、ネパール最古の仏教寺院とされるスワヤンブナート(Swayambhunath)に向かう。
賑やかなタメルから少し離れると、アスファルトの道路は未舗装の道になり、カトマンズのローカルな生活路が広がっていた。タメルからスワヤンブナートまでは2kmほどの距離。
寺院のある頂上までは勾配の階段を登る。外国人のチケットは100ネパールルピー(約180円)だった。
ネパールの神話では、カトマンズ一帯はかつて湖だったが、文殊菩薩が周囲の山を切り裂いて水がなくなり盆地になったとされている。文殊菩薩はスワヤンブーという丘の上に仏塔を建て、大日如来(シャカ)を称えた。それがスワヤンブナートの始まりだそうだ。
5世紀には既に仏教徒の巡礼地となっていたスワヤンブナートは、ネパール仏教にとって最も重要な寺院。境内には土産物の露店も多い。
白いドームの上に乗る黄金の仏塔の四方には、悟りを開いた仏陀の目、ブッダアイ(仏眼)が描かれ、慈悲と智慧を持ってカトマンズ盆地全体を見渡している。鼻のように見えるのはネパール数字の1で、統一や調和を表しているそうだ。ネパールを象徴するイメージとしてよく知られている。
スワヤンブナートの「スワヤンブ」は「自ら生じた」という意味で、「ナート」は神や寺院を意味している。自ら生じた=宇宙と悟りへつながる仏教哲学を表現しているそうだ。
仏教寺院にも関わらず、ヒンドゥー教徒も参拝に訪れるのは、ヒンドゥー教の三大神ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァのうちヴィシュヌがブッダの化身とされているから。二つの宗教の共存を象徴する場所としても知られている。
ネパール最古の巡礼地で、聖地と聞くと緊張感のある場所のようだが穏やかな雰囲気。バナナラッシーを飲んでひと休みした。
俗にモンキーテンプルとも呼ばれるスワヤンブナートにはたくさんの猿が生息している。猿はヒンドゥー教ではハヌマーンという猿の顔を持つ神と結びついてるので、ネパール人にとっては、宗教的にも文化的にも重要な存在とされている。
スワヤンブナートからはカトマンズ全体を一望することができた。緑豊かな巨大な盆地に赤煉瓦造りの建物が無数に建ち並ぶ様子は、これまで旅してきたどの国とも違う景色だ。
スワヤンブナートからの帰り道、学校帰りの子供たちがの下校時間と重なった。
学校帰りの子供達が英語で話しかけてきて、首からカメラをぶら下げていた僕はすぐ子供たちの遊び相手になってしまった。撮った写真をカメラの液晶画面で見られることも知っているので、画面に映った自分たちを指差しながら楽しそうに笑っていた。人懐っこい子供たちの笑顔は幸せな気分にさせてくれる。
子供達が英語を話すのに驚いたので、あとでネパールの教育について調べると、都市部では公立の小学校よりプライベート・スクール(私立)に通わせることが多いそうだ。10,000ルピー以上の入学金や、月1,000ルピー以上になる月謝が家計の負担になっているとのこと。
空き地でサッカーをするネパールの子供たち。
スワヤンブナートからタメルに戻ったその足で、カトマンズのダルバール・スクエア(王宮広場)に向かった。13世紀から18世紀のマッラ王朝の時代に多くの寺院が建てられた場所。
カトマンズの他にバクタプルとパタンにも王宮広場がある。3つの王朝は美術面でも互いに競い合っていたので、各王宮広場はそれぞれの王朝が負けじと造り上げた精細で見事な建築物が数多く残っているそうだ。今に残るネパールの王宮建築や伝統工芸は三王国時代に完成されたもの。
地元の人々の憩いの場として賑わっているダルバール・スクエアには、シヴァ寺院、シヴァ・パールヴァティ寺院、カスタマンダブ寺院など17世紀から18世紀に建てられた寺院が並んでいて、どれも細かい装飾に至るまで凝った造りになっている。広場の入口で「日本語でガイドするよ。そんなに高くないです。」と日本語で話しかけてきた自称ガイドの男を断ってしまったことを少し後悔。ネパール滞在中にもう1度訪れようと思った。
ダルバール広場からの帰りは、インドラ・チョークと呼ばれる市場のような通りを歩き、パシュミナのストールを値切って1,000ネパールルピー(約1,800円)で購入した。パシュミナは、繊維の宝石と呼ばれるカシミア山羊の毛から作られる織物で、ネパールではストールやショールが伝統的に織られてきた。
タメル地区の通りのゴミ。カトマンズはお世辞にもキレイとは言えず、町を歩くと耐え難い匂いに晒されることもある。2007年は、首都の中心部でもこの有り様だった。
タメルの夜は賑やかだ。昼にも増して活気があり、歩いているだけでも楽しい。
ゲストハウスで本を読みながら過ごす夜もいいが、夜の街でビールを飲んで過ごすのもいい。カトマンズには、世界中からバックパッカーや登山家が集まる。食も文化も刺激的で、旅人に対する包容力もあり、物価も安く、人々は優しい。若いうちにしばらく滞在するにはうってつけの場所だ。
明日は、シヴァ神を祀るネパール最大のヒンドゥー教寺院、パシュパティナートへ訪れる。