コンポストで野菜くずや生ゴミを微生物に分解してもらう話
コンポストに投入した野菜くずや生ゴミにカビ=糸状菌が生える。何万種と存在する糸状菌類は、日本では古くから日本酒や焼酎、味噌や醤油などの発酵食品作りに利用されてきたが、野菜くずを入れたコンポスト内では堆肥づくりのスタートを切る役割を果たしてくれる。
野菜くずを覆うように増殖する糸状菌は好気性生物なので、野菜くずの糖やアミノ酸を「酸素」を使って分解する。分解する際の呼吸熱で40℃程度まで熱くなり、糸状菌は自ら発した熱で活動を弱めるか死滅してしまう。
糸状菌に変わってコンポスト内で活躍するのが熱に強い放線菌。堆肥づくりの主役だ。放線菌は、糸状菌が分解できなかった野菜くずの硬い繊維質(セルロースなど)を分解することができ、その際の呼吸熱で60℃以上に発熱する。大規模な堆肥作りではもうもうと湯気が出るほどで、コンポスト内でも手を近づけるだけで熱を感じるほど熱くなる。この過程で一気に野菜くずや生ゴミは分解されるのでほとんど原型が分からなくなり、生ゴミ臭もなくなる。
放線菌類は分解時に抗生物質を産み出す。畑の生きた土ではこの放線菌の産み出す抗生物質が病原菌の増殖を防いで野菜を守ってくれる。放線菌類の活動が落ちつき温度が下がった後もゆっくりと分解を続けて堆肥化(Composting)する。
コンポスティング=堆肥化の定義は様々だが、微生物によって有機物が生物の育成に有益な状態まで分解され、土に還元できる状態にすることと考えればいいと思う。通常、コンポストには、常に新しい野菜くずや生ゴミが追加されていくので、前述した堆肥化のながれが絶えずに進行している状態となる。
生きた土1グラムには、微生物が数億〜数十億匹も存在する。月にも火星にも土はあるが微生物の住む生きた土は地球にしかない。生きた土には植物を育てる力がある。生きた土がなければ野菜は育たないし、家畜を育てる草も育たない。ヒトを含めた地球の生き物の命の源は、土にいる微生物達のおかげだ。
家庭で出るコーヒーかす、卵の殻、バナナの皮など生ゴミのほとんどはコンポストで堆肥化できます。最近はベランダでできるおしゃれなコンポストバッグもあるし、出来た堆肥はプランター栽培でも使えます。ただ燃やすだけのゴミを減らして、地球のためにも、未来のためにも取り組むことができたら最高だと思う。