成都から長距離バスで自然保護区の九寨溝へ
朝8時、成都のバスターミナルから九寨溝行きのバスが出発した。片道10時間の長距離移動で料金は121元(1,880円)。高速道で大都市の成都を抜け、世界最古の古代水利施設で有名な都江堰市を過ぎると、バスは岷江の渓谷の中を走るようになった。昨年(2006年)完成したばかりの巨大な紫坪埔ダムには長さ1.3kmの真新しい橋が架かっていた。
成都のある四川盆地(標高400m)の西側には、標高5,000mから7,590mの山々がチベットまで続いていて、隣接した盆地と山地の標高差が世界で最も大きい。九寨溝へ向かうバスは、そんなダイナミックな渓谷を進む。
バスは途中、食事やトイレ休憩のために何度か停車する。昼食で立ち寄った飯店のトイレは、1回5角(約8円)の有料トイレだったが、俗に言う「ニーハオトイレ」だった。男子トイレは、横に並んで壁に小便をひっかけるだけだが、大の時は前後とつながっている足元の溝を跨いで用を足す。ドアはなく、前後に腰くらいまでの高さの仕切りがあるだけなので、まわりから丸見えの状態だ。溝には前の人のものが流れてくる。女子トイレはニーハオの連続で大変らしい。北京市内では来年(2008年)の北京オリンピックに向けてニーハオトイレの根絶に力を入れているそうだ。ニーハオトイレはいろいろなバリエーションがあるのでググってみると新しい発見があるはず。
出発してから7時間半、ずっと山道を登っている。成都から九寨溝への唯一のこの道は、土砂崩れで道路が半分塞がっていたり、崖から滝が道路に流れ込んでいたりするので、通行が困難な箇所が多くスムーズに進まない。成都で買ったポテトチップスの袋がパンパンに膨れるほど標高が高くなったこの辺りは、四川省アバ・チベット族チャン族自治州で、その名の通りチベット族とチャン族が住んでいる。
トイレ休憩で立ち寄った渓谷の湖の前に観光客向けの白いヤクがつながれていた。マイコはヤクに乗れて嬉しそうだった。料金は1回5元(78円)。
バスが九寨溝に近づくと、4,000~5,000m級の山々が車窓から見えるようになった。3,380mの峠を越えたバスは、日光のいろは坂のようなヘアピンカーブを駆け抜けて、予定より2時間遅れの20時に九寨溝のバスターミナルに到着した。
九寨溝がこれほど奥地にあるとは想像を超えていた。道路沿いにホテルや飯店が立ち並び、中国を代表する自然保護区だけあって整備されている印象だ。北京時間で夜20時だが九寨溝はまだ空が明るかった。
九寨溝で泊まるホテルが決まっていなかったので、バスターミナルにいた客引きと電卓で値段交渉し、飯店を併設したホテルのダブルの部屋に100元(約1,560円)でチェックインした。もっと客引きが多いと思っていたが、九寨溝はツアーで訪れる人が多いようで、僕らのように個人で来ている人は少ない印象。圧倒的なスケールの山の中を12時間も移動し続け、自分の存在が小さく感じた1日だった。